大学生として、非行やいじめ防止、防犯の啓発に取り組む

 「ポラリス宮城(以下ポラリス)」は宮城県内7大学47人の学生によるボランティア団体で、宮城県警察本部の指導を受けながら少年の健全育成を目的に活動する。
 主な活動内容は防犯教室や街頭補導、ポスター制作などの広報啓発活動と、ものづくりや農作業、学習支援を通した立ち直り支援。平成16年の発足以来、より子どもに近い立場を生かした関わりを通して非行やいじめの防止、防犯の啓発に取り組んでいる。
 今回は、令和4年11月13日に開かれた仙台市PTAフェスティバルでの取組みについて聞いた。

学生ボランティア「ポラリス宮城」のメンバー
※学生ボランティア「ポラリス宮城」のメンバー(令和4年度)

 PTAフェスティバルでは、子どもたちに楽しみながらいじめ防止について考えてもらおうと活動。
 「いじめられたときはどうする?」という問いに対して「がまんする」「親や先生に相談する」「相手にやり返す」の選択肢を示して考えてもらったり、「きらいなクラスメイトの教科書やノートを隠した」という行為をどう思うか答えてもらったりと、具体的な例を挙げいじめについて問いかけた。ゲーム感覚の仕掛けによって行列ができるほど盛況となり、メンバーは「楽しみつつ真面目に参加してもらえて良かった」と話した。

いじめの具体的な例を挙げ子どもたちに問いかける
※いじめの具体的な例を挙げ子どもたちに問いかける

 リーダーの千葉優香さん(東北学院大4年)は、子どもの居場所づくりに関心がありポラリスに入った。1年目は児童養護施設の訪問や夜間の公園巡回などの活動に参加したが、2年目から新型コロナの影響で活動の縮小を余儀なくされた。しかし、コロナ禍ゆえに生まれた子どもを取り巻く課題があったという。
 「自宅でオンラインに触れる時間が多くなり、ネット上のトラブルが増加しました」と千葉さん。
 メンバーは「インターネットの安全な利用を啓発しよう」と話し合い、ピクトグラムを使ったポスターの作成に取り組んだ。

 ピクトグラムは伝えたい事柄や物を簡素化して表現する絵記号のこと。ネット上でのいじめや犯罪に巻き込まれることを防ぐため「SNSに悪口を書き込まない」「ネットで知り合った人とは実際に会わない」などを意味するピクトグラムを自分たちで作り出した。
 完成したポスターは宮城県内の全小中学校に配布された。「子どもたちの役に立ちたいと始めた活動でしたが、コロナで人と会えない期間に仲間と共同作業をできたことは心の支えになりました」と千葉さんは振り返る。

ポラリスが作成したピクトグラムのポスター
※ポラリスが作成したピクトグラムのポスター

 3年ぶりとなったPTAフェスティバルでの活動に向けて、メンバーはいじめについて話し合いを深めた。
 いじめ問題の難しさを「いじめられている子が相談しにくいこと」と考える千葉さん。「周りの目を気にして先生には言いづらく、学校で起きたことはなかなか親にも言えない。学校でも家庭でもない相談できる場が必要だと思う」。
 さらに「いじめる側にも悩む子はいる。自分の意志ではなく、主張の強い子に流されてしまうことはある」。
 いじめに悩むすべての子が心の拠り所を見つけられるように、ポラリスは相談窓口を広報するなど活動に取り組んでいる。

 「ポラリスの活動で地域社会との関わりを深められたことが財産」と話す千葉さん。
 コミュニケーション力がつき、相手の立場で考えることを意識するようになったと実感している。「互いの顔が見える明るい街は、子どもたちが生き生きと過ごせるので、いじめも減るのではないか。団体としてそんなまちづくりに貢献できれば」。
 最終学年となり活動期間は残りわずか。熱い想いを後輩へ託す。