いじめ防止へ産学官連携 仙台でネットワーク構築へ

 産学官の連携により社会全体でいじめ防止対策を推進する取り組みが、仙台市で始まる。
 宮城教育大の久保順也教授と、IT関連会社イフティニーの斉暁代表が「仙台いじめ防止ネットワーク」設立に向けて、令和4年9月10日にキックオフフォーラムを開催した。

宮城教育大の久保順也教授(左)と、イフティニーの斉暁代表(右)
※宮城教育大の久保順也教授(左)と、イフティニーの斉暁代表(右)

 宮城教育大は2015年から全国の3大学と共同で「BP(いじめ防止)プロジェクト」を実施している。
 一方、斉さんは仙台市で複数発生した中学生のいじめによる自死に心を痛め、専門であるIT技術を活用して役に立ちたいと考えていた。
 19年に開かれた同プロジェクトの研修会に斉さんが参加して久保教授と知り合い、意気投合。企業や民間団体、研究機関、行政、学校などが協働していじめ防止に取り組むネットワークの構築を目指し、そのプロジェクトの1つとしてITを活用した研究開発を行うことを決めた。
 民間が主導するいじめ対策に特化したネットワーク設立の動きは全国的にも珍しい。

仙台いじめ防止ネットワークは、産学官連携でいじめ防止に取り組むネットワークの構築を目指しています。
※産学官連携で、ネットワーク構築を目指す

 斉さんらは開発にあたって昨年約1500人の小中学生にアンケートを取った。現役教職員や大学生、行政担当者らによる連続8回のワークショップを実施して、子どもたちや現場の生の声を集めた。
 見えてきた課題は、いじめられても声を上げにくいことや、大人が被害のサインに気づかなかったり見て見ぬふりをしてしまったりする現状だった。「いじめは周囲に気づかれないことで深刻化、長期化します。声を上げやすく、上げられた声を必ずキャッチする仕組みをテクノロジーで作りたい」と斉さん。
 まだ構想の段階だが、目指すのはIoT(モノのインターネット)とAI技術を活用した製品。
 例えば腕時計型や防犯ブザー型など子どもが身につけやすい機器(デバイス)をインターネットにつなぎ、いじめ被害を受けたり見聞きしたりしたらSOSを発信するというものだ。発した声の受け手は緊急性によって専門の相談機関や大学生ボランティアなどへ振り分けを想定し、学校や教職員の負担をなるべく増やさない方法を検討する。

IT技術を活用し、子どものSOSをキャッチする仕組みを構想しています。
※IT技術を活用し子どものSOSをキャッチする仕組みを構想

 キックオフフォーラムは、仙台いじめ防止ネットワーク設立準備委員会が主催、宮城教育大とイフティニー、IT関連会社のトインクスが共催。ネットワーク構想の説明に加え、先行して進んでいるIoTデバイス開発プロジェクトについても解説した。

 いじめ問題の解決には多様な専門スキルが必要なことから、ネットワークは自主的なプロジェクトチームの集合体とする計画だ。
 久保教授は「産業や研究機関も含めた地域社会全体で子どもの健やかな育ちを支えようと発信したい」と強調する。「個々では発信力が十分でない活動をつなげば、大きな動きを起こせる。社会貢献への意欲とリソースがある企業・団体・個人にもぜひ多く参加してもらいたい」。
 実際の活動には加わらないが資金面で支援する協賛企業・団体も募集している。
 仙台いじめ防止ネットワークのホームページは以下のリンクから。